短い相槌を打つと、七瀬はそこで口を閉じた。
目線はずっと自分の手元。
少し伏せられた瞼から伸びるまつ毛は、長かった。
「……ねえ、有架」
「……なに?」
「……どうして永瑠ちゃんは、あんなに泣いてたの?」
“どうして”
そう問われて、返答に困った。
確かに、俺が追いつめてしまったのかもしれない。
けれどそれが答えかと聞かれたら、わからない。
もしかしたらそうかもそれないし、もしかしたら違うかもしれない。
ハッとする。
……永瑠のこと、なんにもわかってねェんだ、俺。
上辺だけ見て、わかっていたつもりだったのだ。
本当のところまでは、まったく、これっぽっちも……
……見えない。
「……有架」
七瀬の右手が、無意識に俯いていた俺の前髪をスッと、軽く持ち上げた。
顔を上げる。
七瀬の微笑むような瞳と、ぶつかった。
「……ごめんね、違うよ。私が種蒔いたんだってわかってる」


