「……なんで、泣いてんの」
答えろよ。
俺が何かしてしまっていたなら謝る。
永瑠に何かあったなら話を聞くくらいできる。
だから答えろ。
「……言わないっ」
永瑠は首を振り、落ちてくる涙を何度も拭う。
俺はその右手を掴み、反射的に顔を上げた永瑠の、すでに赤くなっているその瞳を見つめた。
「永瑠っ」
「……ヤダ、言わないっ……」
「なんで」
「だって、言ったらっ……」
「言ったら?」
「有架は、困るだろっ……」
「言わなきゃわかんない」
「だって、だってっ……」
「うん」
「……だってっ」
「うん」
「……オレっ有架が、好きなんだよっ……」
人気のない夕暮れの道に、零れる涙の音が響いた。


