夕焼けが濃くなった気がする。
間違いだと思いたい。
震える肩も、覗き込んだその瞳から零れる、雫も。
歯を食いしばるようにして、右手の甲でその雫を拭う永瑠は、「泣いてない」と言った。
「……嘘だろ」
誰が見ても嘘だとわかる嘘をつく。
永瑠は左腕のみで抱えた袋を、中の眼鏡が壊れるんじゃないかと思うほどに、強く抱え込んだ。
何度も首を振る。
「嘘じゃないっ泣いてないっ……」
「永瑠、どうした?」
「どうもしてないっ」
「じゃあなんで泣いてんだよっ」
永瑠は泣かない。
泣いたところなど片手で数えられるくらいしか見たことはなくて。
それくらい、泣かないヤツで。
なのにどうして今、永瑠は泣かなければいけないのかと。
気になった。
そして心配だった。
その“心配”が、永瑠に対してなのか、自分が何かしたのかもしれないということに対してなのか。
どちらとも、だったかもしれない。
だから聞いた。


