手に取り、うつむいて悩み込む永瑠の目の前にそれを持っていく。
ずっと唸っていた永瑠は、それが視界に入るとピタリと唸り声を消し、眼鏡を見つめ、次いで俺を見た。
「……こ、これ」
「黒だけどピンクっぽい模様とか入ってるし」
「……似合う、かな」
「かけてみたらわかる」
「ほら」と手渡すように眼鏡を差し出すと、永瑠は恐る恐る眼鏡を受け取る。
それからゆっくりとした動作で眼鏡をかけ、これまたスローモーション並みの動きで顔を上げた。
……うん。
「すげー似合うじゃん」
本心を口にした。
というのに、永瑠は不安げに眼鏡の縁を触って目をうろうろと左右に行き来させる。
「そ、そうかな……大丈夫かな。変じゃねェよな……?」
「変じゃない」
「絶対嘘じゃねェよな!?」
「ここで嘘ついてどうすんの」
何かいつもと違うことをするとなると、優柔不断というか決断力に欠けてしまう永瑠。
ムリしてまで決断しろとは言わないけど、常にそれだと困ることもあるわけで。
……まあ、今日はただ眼鏡を選ぶだけの話で、そんなに大げさなことでもないんだけどね。


