なんでそこまで女子っぽいことを嫌うのかわからない。
けど、人により好き嫌いがあるのは当然なので。
「……まあ、お前が黒でいいなら、別にいいけど」
言いつつ永瑠の眺めていた棚を見下ろす。
すると永瑠は、何故か「え」と小さく声を上げた。
どうしたのかと顔を向けると、永瑠は俺を見上げて、
「黒、で、いいかな……」
……さっきまで黒がいいと言い張ってたのはどこの誰だっけ。
「黒がいいんじゃないの」
「いや、うん、黒がいい……んだけど……」
「けど?」
「あ、赤もいいかなと……」
「……迷ってんのか」
「おまっ、有架がそう言ったんだろ!赤も似合うって!」
「言ったけど黒がいいならムリすんな」
「うぅ……」
黒の眼鏡を見下ろして唸り始めた永瑠に、余計なこと言ったかなと後悔。
もはや眼鏡選びというか色選びになっている永瑠をしばらく見下ろし、しかたないかと俺が選ぶことにする。
黒縁の眼鏡が置かれている棚を見渡すと、ふと目についたものがあった。
どっかのティーンズブランドのデザインした眼鏡、らしい。
黒が基調となっているその中に、少し模様が入っているそれ。


