目的地である店に着くと、永瑠は自分の好みそうなフレームが並ぶ棚に向かった。
言うまでもなく、黒。
黒っぽい色が密集する棚。
そんなに黒か。
「お前さ、せっかく新しいの買うなら違うタイプ買え」
棚を見つめて唸り始める永瑠にそう言うと、顔を上げた永瑠は眉根をひそめており。
「え、ヤだし」
「なんで」
「黒が一番使いやすいし」
「赤とか似合いそうだけど」
「え、赤!?」
見るからに嫌そうな顔を浮かべやがった永瑠。
どこまで黒好きなの。
永瑠は思い切り首を横に振って、黒いフレームが並ぶ棚にしがみつく。
「赤とかムリだし!女子っぽいじゃん!」
「まあ、女子だし」
「そうだけどイヤだ!」
「じゃあ間をとってコンタクト」
「どの間をとったらそうなったんだ!?」
「眼鏡ない方がいいし?」
「なっ!?」
そんなにビビることだろうか、と考えてしまうほどに永瑠はそこから飛び退いた。


