「さっきからため息つきすぎだから」
「……ご、ごめん」
「や、別にいいけど……」
素直に謝られて会話が続かない。
いつもみたいに突っかかってくるかと思えば、まったくそんな風ではないし。
夏の炎天下を歩いてるっていうのに、ここだけ温度が低い気がする。
気のせいだと思いたい。
まあ気のせいじゃないことはたしかだけど。
どうしようか、と永瑠につられるように小さくため息をついた。
「……そんなんで眼鏡選べるのかよ」
「え、選べる……と、思う」
「選べないに一票」
「選べるし!っていうか選ぶし!」
あ、調子が戻って来た。
「選べなかったら今度自分で買えよ」
「わ、わかった!」
うつむき加減だったのがきちんと前を向き、うなずいたのを見てホッとした。
永瑠の頭に手を載せて、ぐしゃぐしゃにしてやる。
黒髪だからか、太陽の熱を吸収しまくっている髪の毛は結構熱かった。
「やっと元気になったな」
口角を持ち上げながら見下ろすと、永瑠はちらりと俺を見上げて、
「……うるさいばか」
拗ねたようにそう言った。


