夜の高速道路が嫌いだ。
 ――否、むしろ嫌いなのは、赤い光なのだが。高台に延々と続く、鉄塔の赤い点滅が嫌いだ。
 一つずつが別々に、俺には解らない気味の悪い何かに呼び掛けをしている様な気がする。

「……チッ」

 それまで順調な自動車の流れだったが、どうやらここから渋滞の様だ。
 鉄塔の列が見渡せる場所で、自動車の列は完全に動かなくなってしまった。
 鉄塔の赤い点滅。自動車のテールランプ、ブレーキランプの赤い光。それぞれが夜の闇に赤く滲(にじ)んで、目の奥がチカチカする。
 気晴らしに、カーステレオのスイッチを入れた。


 ……ックの名曲の時間です。今夜の名曲は、シューベルト……カチッ。


 ダメだ。クラッシックなんて聞いていたら眠ってしまう。
 この社用車は、ラジオを聞く以外のシャレたことは出来ない。俺は諦(あきら)めて、ちっとも進まなくなった車の列に向き直った。



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