ホント、なんで? 付き合い始めて一番最初の試合なのにね。

 ちなみに鳴神の彼女は一つ下の二年生で『茜ちゃん』という。いつも応援に来ているから、鳴神のことが好きなんだって、一生懸命なのが分かる。

 質問には答えず芦田は、ピ、ピ、ピという小さな音をさせて、自分の携帯電話を操作している。

「あったコレ!」

 言いながら芦田は、自分の携帯電話の画面を私たちに見せた。

「わ。キレイ……」

 水彩画だろうか。霧雨の中で、ピンク、薄い青、白のアジサイが満開の花を咲かせている。アジサイはこのグラウンドの駐車場にも咲いていたけど、この絵の方がずっと優しい雰囲気で、幻想的だ。

「だろ? コレの実物を観に行ってんの」

「へぇ~……」

 自慢気なのが意味不明なんだけど。

「蒼子(あおこ)さん、この画家が好きなんだって。今日は最終日だから本人が来るって、ずっと楽しみにしてたから」

 だから試合のことは知ってるけど、来ないよ。そもそも誘ってねーもん。
 そう言って笑った芦田が寂しそうに見えたのは、気のせいじゃなかったと思う。

 だって普通は、彼氏の試合の方が大切、だよね?



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