お互い解ってるのに、なんでわざわざ言ってくるかなキミは。

 手を引かれて歩く道は、さっきから上り坂になっていて、息があがってきた。
 でも、拗ねながらどんどん歩く翔輝が、私の手首を掴む手に力をいれてくるから、引かれるがままに早足で歩く。

 初めに行き先を聞いた時は「良いとこ!」としか答えてくれなかったけど、さっきの話で気付いてしまった。
 小学校とは別の方向から来てるけど。この坂を登った先には……。

「ゆうちゃん、目、閉じて」

 前を歩いていた翔輝が突然振り返った。さっきまで拗ねていたのが嘘みたいに嬉しそうに。

「へ?」

「良いから目、閉じて。驚かせたいから!」

「ひゃ!」

 後ろにまわって、両手で目隠しをされた。

「自分で閉じてるから、手は離して~!」

 これじゃ歩けないからと言うと、アッサリ手を離してくれた。
 行き先なんて、もう判っちゃったんだけどな。
 そうは思いつつも、素直に目を閉じる。一瞬、にーっこりと微笑む翔輝の顔が見えた。





「ゆうちゃん、もう目を開けて良いよ」

 それから少しだけ歩いて、どうやら目的地に着いたらしい。

 そっと目を開けるとそこは。

「わぁ! 綺麗……!」

 予想通り、丘の上にある桜の木の下。だけど、満開の花の綺麗さには、完全に予想を裏切られた。
 上を見つめて惚けていると、翔輝に正面から両手を握られる。

「ゆうちゃん!」

 真剣な声の翔輝と目が合った。

「ゆうちゃん……唯花(ゆいか)さん。好きです。ずっと大好きです。ずっと隣に居ても良いですか?」

 …………はい?

「ねぇ……翔輝?」

「なぁに? ゆうちゃん」


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