そんな私達をくすくすと笑いながら見ている朱里さん。


「紅葉も素直じゃないんですよ。
紫衣が元気になって嬉しいって言えばいいのに…。
それに重家様を独り占めしたいのかも知れませんね。」


笑って言葉を落とすと、

「さぁ重家様と紅葉の時間を早く邪魔してあげましょう。」


そう言って私に小袖を着せてくれた。


ほとんど毎日寝間着で過ごしていたから比較的動きやすい小袖を着ても気持ちが引き締まる思いがした。


それに本当に土の上に下りるのがとても久し振りだったので気持ちも弾んでいたんだ。


「気持ちいい!」


草履に足を入れ、土を踏みしめる。


さわさわと風が頬を撫で、太陽の光が眩しい。


同じ場所なのに空気も美味しく感じるんだから不思議だ。


「ほら、あの木の下にみんないますよ。」


庭にある一番大きな木の下を指差しながら話す朱里さん。


彼女の指の先に視線をむけると、人がたくさん集まっているのが見えた。