「あの…――あのね?
そりゃ、ずっと軟禁?生活だったでしょ?
恨んじゃったよ?
確かに感謝の気持ちなんてちっとも持てなかったよ?
だけどね?
紅葉さん達がいたから回復出来たわけだし…
その…―――ね?
そうなの!
感謝してるの!」


私を横目で見る紅葉さんに必死に話をしても、


「本音がボロボロ出てるぞ。」


紅葉さんの言葉通りフォローになるどころか言わなくていいことまで口にして、


「や…―あの、そうじゃなくて、そういうのが言いたいんじゃなくて…。」


どんどん追いつめられたように言葉が出てこなくなって、


「こらっ!泣くな!
なんか俺が虐めてるみたいだろ?」


涙ぐむ私に困ったように紅葉さんは言葉を落とした。


「紫衣!元気になったって斗庵様が仰ってましたけど、早速お散歩に出られますか?」


だけど部屋の中に飛び込んできた朱里さんの腕の中には重家の姿。


「重家様と一緒に庭にでられては如何です?」


にっこりと笑いながら私の腕の中に重家を押し込んだ。


私と違って元気いっぱいだった重家。


屋敷中の人に可愛がられぷくぷくに太って健康そのものの姿を見ると、


「ホント、私も重家もみんなにいつも守られていて感謝しなきゃね。
本当にありがとう。」


涙と一緒に零れ落ちた言葉。


「重家様に笑われてしまいますよ?」


優しく微笑んで朱里さんに言われて、


「やっとわかったか阿呆紫衣。」


紅葉さんは勝ち誇ったような言葉を口にしながらも優しく重家の頭を撫でていた。


幸せな時間はゆっくりと流れるものなのか、本当にあたたかく優しい時間を過ごさせてもらっていると、ほんの少し前まで辛かった療養期間が終わったことを噛みしめたんだ。


「先に庭に行ってるからな。
紫衣はのんびりとゆっくりと出て来いよ。」


なのに私の腕から重家を取り上げた紅葉さんはサッサと部屋を出て行って、


「重家は置いていってくれたらいいのに…。」


一気に不満が広がった。