良君の存在が恐怖が大きくなる日々の中、


「少し旅行に行こうと思う。」


突然、佐和さんが私に告げた。


「旅に出るの?」


「そう、けど旅って大袈裟に聞こえるんだけど…。
ちょっとした観光に行こうと思うんだ。」


「いつ帰ってくるの?」

「そんなにはかからないよ。」



良君に逢ってから佐和さんは私の側にずっといてくれた。


あの日、私達は繋がりを持ち絆が深いと知っても恐怖は私の中に残ったんだ。


「気をつけて行ってきて下さいね。
それから…
連絡も下さい。
早く帰ってきて下さい。それから…。」


不安が募り、言葉が次々と要求になって零れ落ちる。


佐和さんと放れたくない。

ずっと側にいたい。




だけど、それを口にすると佐和さんを困らせてしまう?



「連絡は出来ないよ。」

不安を煽るような佐和さんの言葉に私はギュッとスカートの裾を握り込んだ。


暫くは佐和さんと連絡が取れない。


それだけで恐怖心が膨らんでいく。


「どう…して?」


声が震えて言葉がまともに話せなくなった。


今にも零れ落ちそうな涙をぐっと堪えてヒリヒリと焼け付くような喉の痛みに耐える。


「必要ないからだよ。」

だけど佐和さんの言葉は残酷で、私の瞳からはとうとう堪えきれずに涙が零れたんだ。