ギュッとしがみつく私を紅葉さんも腕に力を入れて抱きしめてくれる。


見上げると苦しそうに歪んだ紅葉さんの顔が目に映った。


「ごめんなさい。紅葉さん、どこも痛くなかった?」


心配になって尋ねる私に、


「重さで腕が折れるかと思った。」


いつもの憎まれ口が帰ってくる。


「本当にごめんね。」


紅葉さんから離れ、謝る私に紅葉さんは顔を逸らしたまま、


「重家様を連れてくる。けど、その前に飯持って来させるからちゃんと食えよ。
じゃなきゃ重家様は俺がずっと抱いてるからな。」


意地悪な言葉を残して部屋を出た。


頭がまだスッキリしない。


普段なら紅葉さんにもっと言い返すことが出来るのにクラクラした頭では言われたい放題で、


「紅葉さんの意地悪―!!」


部屋を出て行く紅葉さんの背中に向かって叫んだ時には襖はピタリと閉められていた。