俯く三成の頬に手を添えて私から彼にキスをした。
「私はずっとあなたのそばにいます」
無言のまま私を見つめる三成の瞳は闇色に染まっている。
どうか信じて!
「こうなってもそなたを失いたくないと思う俺は、もはや忠臣とは言えぬな」
瞼を伏せながら話す三成の眉間には深い皺が寄せられていて、彼が苦しんでいるのが見て取れる。
「私は私の時代でとても好きな人を失ったの」
そう、とても苦しかった。
良君と真衣ちゃんのことを知ったとき、本当にとても苦しかったんだ。
「とても大切にしていた恋だったから、とても大切にしていた友情だったから、その大切な二人に裏切られたことが本当に苦しくて、悲しくて…」
だからこそ私は絶対に裏切ったりしない。
痛みも苦しみも知っている私だから、三成に同じ思いをさせたりしない。
「諦めないわ。だから…あなたも私を諦めないで」
すがりつきながら話す私をきつく抱きしめてくれる三成の腕が微かに震えている。
私が何を言っても彼は秀吉の命に心から従えない自分を許せないのだろう。
「あなたが私を放せないのではなくて私があなたから離れられないのよ」
だから苦しまないで。
自分一人を責めないで。
三成の腕から離れて彼をかき抱くように抱きしめた。
「あなたは何も悪くない」
私が秀吉の側ではなく三成の側を選んだの。
私は三成としか並べないの。
「一人で苦しまないで、あなたは何も悪くないわ。悪いのはあなたから離れられない私の方よ」


