「秀吉様が…」
三成の唇から落ちてくる言葉は重く、言葉が続かない様子で言葉の代わりに私を強く抱きしめる。
秀吉は私を側室にすることを未だ望んでいるの?
もしかしたら無理難題を持ちかけられたのかも知れない。
「何があったの?」
三成の腕からすり抜けて彼を真っ直ぐに見つめると彼の瞳は吸い込まれそうな程の闇色をしていた。
その闇に飲み込まれないように胸にぎゅうっと拳を押し当てたまま
「話して下さい」
苦しみは二人のものだよね?
一緒に生きていこうっていったよね?
だから何でもはんぶんこなんだよ。
一人で全てを背負わないで!
言葉にならない気持ちが胸のなかで膨らんでいく。
「明日は休めと言われた」
「え?」
「明日はゆっくりと紫衣と過ごす時間を取れと…」
「だったら、明日はずっと一緒に過ごしましょう」
「……………」
「誰にも邪魔されずに2人だけで部屋の中で過ごしましょう」
「……………」
「重家のお世話も明日はお休みにします」
「……………」
「それとも今まで一度も出来なかったデートをしてもいいですね」
「……………」
「こちらでのデートはよくわからないので、あなたに全てお任せになりますけど、どんなデートでもあなたと一緒ならきっと楽しくなります」
秀吉の言葉の裏は私にだって理解できる。
秀吉は私を側室にするつもりなんだ。
三成を休ませるのは私達に思い出を作らせてやろうという配慮。
けど、私はこの時代の女じゃないのよ。
権力に負けるつもりも流されるつもりもないわ!


