「紫衣ちゃん、可愛すぎる!!」


挨拶をした瞬間お父さんにムギュッと抱きしめられた。


「えっ..キャ!!」


ぎゅうぎゅうと抱きしめるお父さんの胸の中はお父さんと同じ煙草の匂いがした。


「父さん!やめろって!」


すぐに佐和さんに腕を引かれて彼の腕の中に閉じ込められてしまう。


佐和さんの香り。


一番安心する佐和さんの香りに包まれた。


だけど佐和さんのお父さんの香りも安心できる。


あたたかい胸、煙草の匂い。


ずっと避けてきたお父さんの香り。


「お父さんと同じ匂いがします。」


「紫衣、大丈夫か?」


「はい、佐和さんのお父さんと私の父は同じ匂いがしたんです。佐和さんの次に安心できる香りです。」


「なにっ!? 加齢臭か?そうなのか?」


「臭いってよ!」


「そんなことはない!そんなはずは...」


「とにかく父さん紫衣に触るなよ!次触ったら父さんでも容赦しないからな!」


「ちがいますっ!臭いとかじゃなくって煙草の匂いがしたから...」


クンクンと自分の腕を鼻の近くまで持って行って匂いを確かめる佐和さんのお父さんに慌てて訂正を入れると


「そんな訂正しなくていいよ」


佐和さんはお父さんにはとことん意地悪で、


「そんな...」


「だろ!おかしいと思ったんだ。まだ加齢という年でもない。私はまだまだ若い!はずだ!」



ホッとしたように話すお父さんが可笑しくてくすくすと笑ってしまった。