「どうした?」

背中に感じるぬくもり、私を抱きしめる力強い腕。

私を一番安心させてくれる佐和さんの爽やかな香りに包まれて、我慢していた涙がポロポロと零れ落ちた。


ぎゅっと私を抱き締める佐和さんの腕にポタポタと落ちる涙。


「なぜ泣いてる?」


肩に手を置き、私をくるりと反転させて向き合う形で佐和さんの腕の中に閉じこめられた。


「芽衣ちゃんを傷つけちゃった。」


彼の胸に顔を埋めて言葉を紡ぐと、


「ち…違うの!
私がっ…私がいけないの。ごめんなさい…紫衣、ごめん…。」


背中から芽衣ちゃんの言葉が聞こえる。


必死に言葉を紡ぐ芽衣ちゃんだけど、泣いてるの?


声が掠れて辛そうだよ。

「紫衣、芽衣ちゃんに言わせたままでいいのか?」


ダメッ!

芽衣ちゃんが悪い訳じゃない!


「芽衣ちゃんは悪くない!悪くないよ…」


佐和さんのシャツをぎゅっと握って私は彼の胸の中でふるふると首を横に振った。


「紫衣ちゃんは芽衣を悪くないってさ。
いい加減2人とも気付けねぇのか?」


「ホントに面倒な2人だな。
けど、互いに想い合うから譲れないんだろ?
仲のいい証拠だな。」


「その通りだな。
強情で泣き虫なお姫様2人、いったい何が原因なのか話を聞くことにするか?」


ぐずぐずと鼻を啜る音はきっと芽衣ちゃんが泣いてるから出てる音。


私も同じように佐和さんにしがみついたまま胸に顔を埋めたまま動けなかった。


本当は芽衣ちゃんの顔を見て謝りたいのに、なんだか気持ちがぐずぐずしてしまって言葉が纏まらない。


なんて話を切り出せばいいのかもわからなくなっていた。