毎朝、早起きをして動きやすい小袖に着替える。

日常身につける着物は朝のこの行事が終わってから着替える。


けどそれは朝食とお見送りの時だけで、私は小袖で1日の大半を過ごしていた。


それも朱里さんはいい顔をしない。


「ご自分のお立場をわかってらっしゃいますか?」


丁寧な言葉はたっぷりと嫌味を含んでるからで、

「わかりたくもない。」

私はその言葉をバッサリと切るように言葉を放つ。


別に彼女を怒らせたい訳じゃない。


五助さんを困らせたい訳じゃない。


妻として、母として譲れない事があるだけ。


「紫衣様!」


「はい。」


「部屋に戻りましょうよ~、奥方様~。」


苛ついた朱里さんの声と五助さんの懇願する声。

だけど…
だけどっ!!


「ちゃんと終わらせたら部屋に戻ります。」


ここは折れちゃいけない。


だって私は三成の妻だし、重家の母なんだもん。

きゅっと拳を作って足を一歩前に出す。


「いけません!」


「奥方様~。」


だけど私はその扉をくぐる前にいつもいつも邪魔されるんだ。


「何をしている。」


淡々と紡がれるこの声に…。


そして軽々と抱き上げられ、強制的にその場から連れ去られる。


これも日常。


毎日繰り返される私の日常。