「私も同じだよ。
紫衣も、戦国の紫衣も大事な友達なんだから。」

ぽたぽたと瞳から落ちる涙がテーブルに水たまりを作っていく。


「何もしてない紫衣なら私は側にはいないよ?
石田にもちゃんと話をしたでしょう?
三成にだって話をしたのでしょう?」


「………。」


「ただそれが思うようにいかない時だってあるじゃない。
あって当たり前だし…。だから私達がいるんでしょ?
協力出来る友達がいるのも当たり前でしょ?」


だから泣かないのってニッコリと笑う芽衣ちゃん。


彼女の手にはたくさんの紙ナプキンが握られていて、その手は私に差し出されていた。


「あ……り…がと……」

「まぁ鈍感すぎて石野さんがお気の毒ってところもあるけど紫衣はそのままがいい。
私は今のままの紫衣が大好きだよ。」


「…………。」


「石野さんだって同じだと思うよ。
まだまだこれからじゃない、私達。」


そんな風に言って芽衣ちゃんは俯いたまま紙ナプキンで顔を覆う私の手に掌を重ねた。


「まだ芽を出したばっかりなんだよ?
咲かすのはどんな花?」

綺麗な花を咲かそうねって言った芽衣ちゃんはとても綺麗な花のような笑顔で微笑んだ。


芽を出したばかり…。


私はみんなに水を与えられ、そして佐和さんに照らされて成長していきたい。


小さな野に咲く花のように風に吹かれ、雨に打たれても凛と咲く一輪の花になりたい。


「いつか花になりたい。」


顔を上げて芽衣ちゃんと視線を合わせて言葉を落とした。


芽衣ちゃんも私の言葉に頷きながら微笑んでいる。


だけど、私達が芽を出すように…。


成長するように私達の望まない芽が出て育っていきつつあることにこの時はまだ気付いてなかったんだ。