僕は新しいレンズの試作品をテストすべく、近所の公園へと足を運んだ。

すると、公園のベンチに一人座っている女性を発見し、

同時にそれが、佐藤の彼女だということに僕は気がついた。

そしてさらに重大な発見をし、僕は思わず感嘆の声を漏らした。


「へぇ。佐藤の彼女が、視覚矯正コンタクト使用者だったとは想定外だ」

僕は遠くから走ってくる佐藤の姿を捉えた。

同時に

【視覚矯正眼鏡使用者】

という文字と、赤いマークが佐藤を囲んだ。


「テスト終了。それにしてもあいつ等は、自分の恋人が視覚矯正者だとは、これっぽっちも思っていないだろうな」

僕は佐藤に見つからぬよう踵を返し、自宅へ続く交差点へと向かった。

「まぁ僕に、彼らの幸せを邪魔する理由は、これっぽっちもない。それに、内面から惹かれ合うことは決して悪じゃない」



交差点には、数十人の赤いマークが僕のレンズに表示されている。

【視覚矯正眼鏡使用者】
【視覚矯正コンタクト使用者】


「外見ってのは第一印象だからな・・・・・・この代物の需要は当然と言えば当然か・・・・・・」

僕は眼鏡の縁をクイッと上に上げると、信号が青へと変わった。

これから起こるであろう視覚矯正ブームを想像し、

僕は昂奮による冷たい笑みを浮かべた。


だけど笑いは止まることなく、肩をカクカクと震わせた後、

僕はその場で腹を抱え札束に埋れる自分を夢想した。

「最高だ!一攫千金もんだ!!」


人々が鈴木に向かって歩いてくる。

どいつもこいつも赤いマークで囲まれている。

しかしほとんどの人が、悪魔の様に笑う鈴木を訝しがることもなく通り過ぎていく。


おやおや、

どうやら流行する矯正眼鏡は、

行動すら矯正されて見えてしまうほどの度の強いレンズみたいだ。