俺は商店街に生息する鈴木眼鏡の扉を派手に蹴っ飛ばした。

「さ、佐藤、扉は静かに押してくれ!びっくりするだろ」

「視覚矯正眼鏡が買いたい……」

「おい、僕の話を聴くんだ。何度扉に君の足型が残ったと思って……」

「視覚矯正眼鏡を見せてくれ」

「聞いちゃいない。いいさ、特別価格で販売してやろうと思っていたんだが……仕様がな」

「鈴木様、俺が悪ぅございました。俺のこの右足が我が侭な奴でして、ごめんなさい」

「まったく、君の性格にはうんざりさせられるよ」


眼鏡屋の鈴木とは、俺が眼鏡を掛け始めた頃からの付き合いになる。

(なんか、とっても馬鹿っぽいけど、俺も彼も、眼鏡というものがなければ、おそらく出会ってはいなかっただろう)

そして、鈴木と俺はメガネーズと揶揄されるほど間抜けコンビだった。

しかし、俺も鈴木も、抜けている部分が両者とも違う為、二人が協力すれば、大抵のことは簡単に出来てしまうのもまた、事実だ。