途方にくれたマリア。

行くあてもなく、トボトボと道を歩いていた。

「お嬢ちゃん」

すると、マリアの下の方から声がした。

「まぁ!」

マリアは驚いた。

なんと、ぬいぐるみのようなウサギが喋っていた。

「お譲ちゃん、驚くのはまだ早いでっせ」

そのウサギは、自分の毛をいじりながら言った。

「どうして、ウサギさんはココにいるの?」

マリアは恐る恐る聞いてみた。

実際、真実や現実に触れたくなかったから。

もし、コレが幻か何かだったら、このままでいたかった。

本当は・・・。

すると、ウサギは口を開いた。

「お譲ちゃん、君は迷子の子猫のようだよ。」

マリアは、このときはまだ、このウサギが言っていることに気がつかなかった。
理解できなかった。
むしろ、意味が分からなくて、理解しようとも思わなかった。

けれども、マリアは一人ぼっちが嫌だったので、ウサギの話をしっかり聞くことにした。

「ウサギさん、それはどういう意味?」

本当はそこまで聞くつもりはなかったけど。

「お譲ちゃん、君はどこから来たのかい?」

疑問文を疑問文で返すなんて。

マリアは、そう思ってウサギにこう言った。

「あたしの住んでいる所は、訪ねたことにしっかりと答えてから次の質問に答えなくてはならないの。だから、ウサギさん、あたしの聞いたことをちゃんと答えてほしいわ?」

マリアは、何となく意味もなく、そう言った。

けれども、ウサギはしばらく黙ったままだった。

すると、急に何かを言い出した。

「・・・それは、お譲ちゃんの国での話だろう?」

そのとき、ウサギの目がキランと光った。

「えぇ、そうよ」

マリアは、何となく答えた。

「だが、ココはお譲ちゃんの知っている国ではない」

マリアは、
「そんなこと、言われなくても分かっているわ」
と振り払おうとした。

でも、やめた。

これ以上言うと、ウサギさんが消えてしまいそうだったから。

「ウサギさん・・・、あたしたちの国のことを知っているの?」

けど、ウサギは答えなかった。