チュンチュン・・・

あたしは、いつの間にか寝ていた。

「あら・・・?あたしってば、こんなところで・・・。」

真っ白だったレースのスカートも、今では、土がついて茶色くなっている。

「まぁ、お母様に叱られてしまうわ。」

あたしは、体を起こし家へ帰ろうとした。

「・・・・・・。」

辺りを見回したあたしは、唖然とした。

「どういうこと・・・?」

だって、あたしの知っている景色が何一つないんですから。

「あたしの家も、お姉さまもいない世界にきてしまったの??」

あたしは、崩れるように跪いた。

「嘘よ。嘘・・・。こんなこと、あり得るはずがないわ!!」

あたしは、自分が自分であるように、
必死に、自分に言い聞かせた。

「嘘でしょう?」

今いる世界も、
あたしが今、立っているこの場所も、
全部、あの絵本通り・・・。


あそこに咲いているあの花も、
ここに咲いている赤いバラも、

あの絵本で読んだものばかり・・・。


こんな偶然は許されるのか・・・。


こんな世界が存在していいのか。






あたしは、まだ
幼くて、
分からなくて、
まだ、
知らなかったんだ。