偽りの仲、過去への決別

カズの学校生活は、個性的な人間よりも平均点を採るための教育が好まれた。個性的な人間よりも協調性を重んじていた。社会全体の要請でもあった。 自己主張をすると、いつの間にか自分のいる場所がなくなってしまっている。 カズは本当にうざったくてしょうがなかった。
カズは、本気で思っていたがあった。知恵と勇気があったなら、学校も家も爆弾でぶっ飛ばしてやりたかった。何もかもなくなり、まっさらな空間に、自分の居場所を作り上げたかった。 しかし、淡い空想は、ただの空想であり、現実はいつも一方的に、カズの心を悩ました。
カズは本当の悩み事は、誰にも相談する相手がいなかったことだ。 大人を信用できずにいた。年をとっている祖父には、どこかしら遠慮があった。 両親の無様な思いが、カズには、どこか自分のように辛く、祖父に対して後ろめたさがあるからだ。
カズの時代は、核家族化が、進み、大家族が少なくなっていた。個人個人のプライバシーが重んじられ始めた。 立派になることは、一流企業に入ることが、一番だと思われていた。すべてにおいて、この事が最優先課題になっていた。 個人の能力よりも、団体での協調性、長所を伸ばすよりも、短所を直すことが最優先事項になっていた。
カズは度重なる転校のストレスと、家庭不和で原因不明の言語障害にかかっていた。
学校で国語の本を読むときは、いつも笑いものになっていた。
新しい環境でも、それは変わらなかった。 新しい担任教師は、カズがふざけていると思い、必用に攻撃してきた。 毎回本を読まされ、そのたびに、クラス中の笑いものになってしまった。
カズは、担任教師に事実など話そうとは思わなかった。
カズの脳裏には、大人なんて信じられない思いがあったからだ。話した所で守ってくれる保証なんてないからだ。
余計、恩を着せられるみたいで、本能的な拒絶反応だった。それだけ、カズは大人を信じられなかった。
とにかくカズは、クラス中の笑いものになってしまった。