偽りの仲、過去への決別

松山達３人を個別で職員室に呼び出し放課後残るように命令した。 松山はとにかく従うことにした。今担任教師と何かもめ事を起こしてしょうがないと思った。それに昨日カズと喧嘩をして刃向かう余裕もなかった。 結衣は何も語らずただ担任教師の話しを聞いた。
今まで注意をされたことがない結衣は反発する形が作れずにいた。 ここまでは担任教師の思惑通りになった。個別で呼び出して力を削ぐことができた。そして思ったほど松山が反発しなかったことが意外であった。 後残るは１番楽な洋二だと担任教師は思っていた。自分の意思がなく、いつも人の意見にしか耳をかさない洋二は１番説得しやすいと踏んでいた。「今日の放課後残るように。」
担任教師は洋二に向かって言った。しかし今まででは考えられない返事が洋二から返ってきた。「今日ちょっと用事があるので残れません。」 「用事……。それは今日じゃないといけないのか。」 「はい。今日じゃないと。」
「どうせ、病院に見舞いでも行くんだろう。」 「いいえ、塾に行くんです。」「嘘を言うな。お前が病院に行くことはわかっているんだぞ。」 担任教師は声を荒げた。 「じゃあどうして先生は僕がカズの見舞いに行くと決めつけるんですか。」
担任教師は声を詰まらせた。 「それともカズが目を覚ましたのに行ったらいけないと言うのですか。」 「そうだ。」 「先生はカズと話したんですか？。」 「いや話しはしていない。でもお前達と会いたくないとカズは言ってんだろう。」 洋二は容易に引き下がらなかった。 担任教師の表情に焦りの色が出てきた。まさかこの洋二が反抗的な態度を見せるなんて思いもつかなかった。 洋二はきっと誰かが担任教師に告げ口をしたことがわかっていた。その告げ口の相手が証拠はないが、ヒロだとわかっていた。
「先生、僕は今日塾があるので残れません。もしどうしても残れといわれるのなら、親に許しを得てください。」 担任教師は洋二の家庭が苦手であった。もし洋二の祖父を怒らせることでもすれば、非常にまずい立場に追い込まれるからだ。
「先生はカズの見舞いになぜ行かないんですか。」 洋二は担任教師がカズの所に行けないのは、散々カズをいじめ、そのことがカズの祖父や父親に知れることが嫌だからである。