偽りの仲、過去への決別

「でも兄貴達がカズに怪我をさせたのは事実だから松山達の誘いに乗って見舞いに行きました。でもカズはまだ回復していなくて大変でした。」 「そうだろう。まだ目覚めたばかりだし。」 「はい。まだ精神的に不安定で。それに松山達がカズを興奮させて喧嘩になり大変でした。」 「松山達は病院で喧嘩したのか？。」 担任教師の脳裏で婦長の顔が浮かんだ。担任教師は知らぬ間に身震いをしていた。 「目覚めたばかりのカズにいつも見舞いに来ていたことを松山が感謝しろと高圧的に言ったのが喧嘩の原因です。他の２人も松山の肩を持ってそれで……。」 ヒロはこれでこの間抜けな担任教師を騙したことを実感した。
「それでカズが松山達に見舞いに来ないでくれと言いました。僕も松山達に今は時間をかけるべきだと言ったのですが……。」 ヒロはあまり具体的に言ってしまうとボロが出ると思った。 ここは担任教師の想像力に期待した。
「それでも松山達は今日も見舞いに行くと言っているんだろう。今度はカズが見舞いに来るなと言っているのに。」 ヒロの思惑通りになった。「はいー。今はまだ会いたくないと言っているカズを無視するみたいです。」
「困ったなあー。今度こそ病院側は本気で怒るぞ。カズ本人が嫌がっているのに。」 担任教師は困り果てていた。 ヒロはここで１つの提案をした。 「今日松山達を放課後残したらいかがでしょうか。」「そうだなあ。」 担任教師は考えていた。
「よし、今日松山達を放課後残そう。」 担任教師はこれで問題の先送りができることを喜んだ。 ヒロは計画通りに運んだことを心底喜んだ。 「先生僕が今日言ったこと内緒にしてください。松山達に恨まれますから。やっぱり友達でいたいですから。」
ヒロの心配な顔を見て担任教師は松山達に何も話さないことを約束した。 後は病院に行ってカズをどのように料理するかだけであった。圧倒的な勝算はなかったが、今現在弱っているカズだったら引き分け以上にことを運ぶ自信はあった。 担任教師は早速手を打った。