偽りの仲、過去への決別

ヒロは職員室に行き、松山達の担任教師に近づいていった。 担任教師はつぎの授業の準備をしていた。ヒロは担任教師の周りに誰もいないことを確認した。「先生ちょっと話しが。」 担任教師はヒロを見た。
「あれ、君はうちのクラスではないだろう。」 「はい。隣りのクラスです。」「私に何か用事があるのか?。」「はい。大切な用事が。」 担任教師は立ち上げた体を椅子に戻した。 「大切な用事とは何なんだ。」
ヒロはゆっくりと話し始めた。「先生のクラスの松山達3人が病院の忠告も聞かず勝手にカズの見舞いに行っているの知ってますか。」 「いやー松山だけだと思っていたが。」「松山以外にも、洋二と結衣も一緒に行っているんですよ。」
担任教師は唖然としていた。まさか松山以外にも、同調者がいたなんて初耳だったからだ。 「それは本当なのか。」「本当です。実は僕も誘われたんです。元々カズとは仲が良く、怪我をさせた兄貴達ともカズは顔見知りで。だから松山達の誘いに乗って見舞いに行ったんです。先生も行かれたんでしょう。」 担任教師は嫌な顔をした。 ヒロは知っていた。まだカズの見舞いに行ってないことを。 「まだ私は見舞いに行っていないんだ。大体面会謝絶なのに松山が勝手なことばかりやったから、私は迷惑したんだ。」
担任教師は苦々しく話した。カズと会いたくない本音を松山の行動により良いいいわけができた。 しかし松山に同調者ができたことは内心うれしくはなかった。 「昨日カズと会ったんです。」「会ったのか。」「はい。」「それで。」「カズはまだ痛そうでした。」「君の兄貴達がカズを……。」 担任教師は言いかけた言葉を飲み込んだ。やはりヒロの前で事件のことを触れることに気が引けた。
「確かに兄貴達がカズを傷つけたことは事実です。でも兄貴達も傷つき入院したのも事実です。」 ヒロは涙を流した。 「そうだよなあ。」 担任教師はヒロに同情した。