奇蹟のはじまり

話の矛先が変わって戸惑

ってしまいました。そん

な僕を気にした風もなく

松本くんは話を続けまし

た。

『この木だよ』

松本くんはちょうど通り

かかった桜の木を見上げ

ました。

『咲かずの桜』

「みんなの間ではそう呼

ばれてるみたいだね。こ

の木はね、いろいろな人

の人生を見てきてるんだ



『木が…?』

「大野くんにしてみたら

、不思議な言い方かもし

れない。だけど、この桜

の木はまるで愛する人を

見守るみたいにこの街の

人たちを見てきたんだ」

松本くんの話を聞いても

どう反応していいのかわ

からなくって曖昧な返事

しか出来ません。