奇蹟のはじまり

そいつの怒鳴り声に何も

言えなくなりました。

『悪かった、怒鳴ったり

して。だけど、俺を殺さ

なければお前の命も危な

いんだぞ。もう二度と主

人にも会えなくなるんだ

ぞ』

そいつに肩を揺さぶられ

、心も揺らぐのがわかり

ました。

日本に帰りたい、また和

也様や智くんに会いたい

と言う気持ちは確かにあ

りました。

だけど、

「誰かを犠牲にして日本

に帰るのは嫌なんだ。も

う誰も殺したくない」

うなだれた僕の肩にそい

つが手を置きました。

『ここはまさに生き地獄

以外の何物でもないな』