奇蹟のはじまり

突然、かずが人差し指を

唇に当てて静かにするよ

うに合図しました。

『誰かいる』

かずが囁くように言いま

した。

僕は気付かなかったけど

、かずは人の気配に敏感

です。昔からの習慣が抜

けないのです。

かずは前を見たまま、目

線だけちらっと後ろを振

り返る仕種をしました。

その時、翔くんの話を思

い出しました。

振り返っては行けない―



僕は無言で頷くとかずと

目配せを交わしました。

かずにはそれで通じます



僕たちは目を閉じて心を

込めて祈りました。

逢いたい人を心に強く思

いました。