「それで?」

『うん。彼女は振り向き

たい気持ちを我慢して、

背中越しに彼と話をした

んだって。彼は彼女が自

殺しようとしてることも

全て知っててこう言った

んだ』

いつも、傍にいて見守っ

てるからあなただけは生

きていて欲しい―。

『彼女はそのことをきっ

かけに自殺するのを辞め

たんだって』

一気に話し終えた翔は冷

めたお茶を飲み干した。

「黄泉比良坂(よもつひ

らさか)みたいな話です

ね」

『何それ?』

「古事記にある話ですよ

。それを下って行けば黄

泉の国に至ることが出来

るという坂です」