こういう事は、裏切りと言っていいものではないか?

だって、
あたしと絵里は、親友と言ってもいいくらい仲が良かったのだから。

つまり、絵里があたしを、
 ・・・・・・・・・‘裏切った。’

そういうことに、なるのかな。



あたしは、絵里の取り巻きたちに、ほうき柄で思い切り殴られたようだった。
あたしは、このときの記憶は全然残っていない。

そう・・・
あたしは、気を失っていたのだから。




あたしは、目が覚めると保健室にいた。
その近くには絵里たちの姿はなかった。


今でも、少し覚えている。

・・・・・・。

絵里の冷たい目。
闇のように染まった悪意感。


グループでやっているから、罪悪感は・・・
ない、だろう。

むしろ、楽しんでいるのでは、ないか?


あたしは、自分の体に身動きがきくことに気がついた。

けれども、荒れ果てた髪。
ボロボロになった制服。
取れ掛けた赤色チェックのリボン。
今落ちるかもしれない第二ボタン。


あたしは、自分の惨めな姿を見て、急に涙がこぼれた。


「・・・れ??なんで涙なんか・・・。」

あたしは、慌てて涙を拭った。
誰にも見られたくなかった。

あたしが、 “弱い” っていうこと。

司には、知られたくない。
絶対。
絶対。

だから、あたしは絶対泣かないよ。
きっと、あたしは強くなる。
強くなるから・・・。

司と同じくらい、ううん。それを抜かすくらい。


あたしは、歯を食いしばる。

「泣くもんか。絶対に泣くもんか。」

あたしは、白い布団を持ち上げて近くに乱雑に置かれたあたしのカバンをとる。

絵里・・・。

なんであなたは、あたしを裏切ったりしたの?

あたしは、このときなにか、嫌な予感と同時に
なにか、大切なことを忘れていたのかもしれない。


どうして、このときあたしは気づかなかっただろう。