あたしは、涙を溢していた。
「っ・・・。」

「うっそ!?泣いちゃった??」
笑いながら言わないで・・・。
なんて聞こえるはずがない。

そのとき、
保健室とはまた反対側の廊下に、司がいることに気がつかなかった。
気づくはずなかった。
あたしは、自分だけで精一杯で周りなんて見ている暇がない。

「歩っ・・・」
そう、哀しげに呟いてた。
でも、あたしには聞こえなかった。
今の、あたしには分からなかった。

いつもの、あたしには分かっていたのかもしれない。

司はそのとき、急に目つきを変えて走り出した。


はやく・・・
早く・・・
司・・・。



そのときだった。



ガララララッ!!

!?

「司!!」

「げっ!司なんでお前!!」
あたしに触っていた男が、ぱっと手を離した。

「・・・わんな。」
「え?」
「触んな!!」
司はあたしを、ぎゅっとした。
「っつ・・・司??」
「ごめん。」
そういうとあたしを、持ち上げた。
「ちょっ、司??」
「ついて来い!」
「・・・」

あたしは、司にやれるがままだった。
司は、その男をにらみつけた。
「司、ごめん!」
男たちは怯えて逃げていった。
「・・・司。」
司は、あたしをおろした。
気がついたら、司が泣いていた。
「っ・・・。ごめん。歩。」
「なっなんで??司、助けに来てくれたんでしょ?」
あたしは、膝まついた司に合わせて腰を下ろした。
そのとき、あたしと司の顔がうんと近くなった。

「歩、キスしていい?」
「え・・・」

あたしは、否定しなかった。
君ならいい。
君ならいいよ。

「キスして・・・。」