「おはようございます、二人とも」

「「おはようございます」」

職員室へと向かう二人に、教師らしい初老の男性が挨拶をする。

二人とも会釈付きで返し、職員室の中へと入っていった。

それから、二学年の教師が集う場所へと移動し、それぞれ席に着いた。
他の二学年の教師は、まだあまり来ていない。

浩平のデスクの上には、様々な写真立てに入れられた写真が、所狭しと並べられている。
隙間さえあれば置いてやる!!と言わんばかりにある。

写っているのは、勿論美和に美奈子、浩平だ。
美和と浩平の二人で写っているものが一番多いが、美奈子とのツーショットも負けていない。

何とすごいデスクだろうか。

初めて見る人間は、とにかく圧倒されるだろう。

そんな素晴らしい写真達の中でも、一際大きい写真がある。

背景は白が基調とされており、ベッドが置いてある。
そしてそのベッドの上に、産まれたばかりの赤ちゃんを抱く満面の笑みの美奈子。

その横に寄り添って、優しい微笑みを浮かべている浩平。


美和が産まれた日、病室で撮った写真だ。



そして、唯一の家族写真でもある。

この日の夜に、美奈子の容態が急変して二日後に息を引き取った。


だからこれは、三人にとって最初で最後の家族全員で撮る写真だった。