「実紅…」
「な、なによぉ…ッズ…」
抱きしめる力を強くして
顔を実紅の耳元に近付けた。
ばか、なのは誰?
『似合ってる』
なんてただの言葉を真っ正面で言えなくしたのは…
…誰、
なんだよ…。
似合ってるに、
決まってんだよ…。
「実紅…」
「だから…なに…」
「…ドレス」
「なに…」
「…似合ってる」
「……せこい…」
そのあと実紅は"卑怯者"とボソッと言った。
「卑怯者で悪かったな?」
「普通…!!普通は、こんな時に言わない!!」
だって普通じゃねえもん。
しかも俺、
“S”だし?
「でも卑怯者…だっけ?」
「…あ……」
冷や汗をかき始めた実紅。
「誰が…かな?」
「………っ!!」
危険を察知したのか体育館に向かって歩き出した実紅。
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