悠治の一目惚れした相手こそ、
里美だった。

里美は名前ではなく苗字。

里美裕子

これが彼女のフルネーム。

最初はほんとに静かそう、
いや静かだった。
そうまだ猫を被っていたからな。

それから悠治はしつこく彼女に付きまとった。

「裕子ちゃ〜ん」

悠治が里美の名前を呼ぶ度に、
里美が「うざっ」
と言っていたことは、
後になって知ることになる。