一匹のキャノムが業を煮やし、大きく唸りながらベリルに襲いかかった。
「──っ」
頭部を守るように出した左腕にバクリと噛みつく。その痛みに顔が歪み、ベリルは小さく呻いた。
腕を引きちぎらんばかりに力を込めると牙が肉に食い込み、骨がミシミシときしみをあげる。
「ベリル!」
ティリスの声にベリルの危機を察知したリュートだが、その僅かな隙を突いてキャノムが飛びかかる。
剣ではあの体重を支えきれない。のしかかられれば酸の唾液が──やるしかない。心を決めてキャノムを睨みつけた。
すると、閉じられていた右瞼がカッと開き、黄金の瞳が現れる。それを合図に、まるで鳴いているかのように山全体が震え始めた。
突然の現象に、レキナたちは何が起こっているのか解らず恐怖で抱き合っている。
ティリス越しに見えたリュートから吹き出る霊気に、あれは誰なのかとレキナは身震いした。



