クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

「リュート!」

「来るな!」

 共に闘おうとしたティリスを制止する。この狭い場所で三人が闘うのは無理がある。向こうはあいつ(ベリル)に任せるしかない。

 豹を思わせる顔つきに黒い体は強靱で、生半可な剣では傷を付けられそうにない。

 ベリルはキャノムから目を離さず、右太もものハンドガンにゆっくり手を掛ける。この状況で慣れない剣での戦闘に勝ち目はないと判断した。

 かと言って、ハンドガン程度の威力では、あの固そうな表皮を貫けるかどうか疑問だ。中身は頑丈でなければ良いのだが。

 狭い谷間に風が舞い、石ころが軽い音を立てて転がった──刹那、大きい方のキャノムがリュートに襲いかかる。

 鋭い爪の攻撃をひらりとかわし、その体に刃を走らせた。

「チッ」

 思っていたよりも固い感触に思わず舌打ちする。この程度の攻撃では、かすり傷にもならないようだ。

 二匹のキャノムはそれぞれ、簡単には倒れそうにない獲物を前にして唸りを上げている。

「ベリル様、リュート様」

「大丈夫。きっと」

 ティリスはレキナたちを守るように背後に隠し、その光景に息を呑む。

 リュートは負けない。でも、ベリルの強さをあたしは知らない。ここで倒れる人じゃないはず。