──食事を済ませ、服も乾いたので一同は荷物をまとめて旅を再開する。
「この先にある岩山はそれほど高くないので、二日で超えられると思います」
ラトナは遠方に見える山を指差した。
「お約束なら、恐いモンスターでも出るかな」
「あ」
ベリルの言葉にラトナが声を上げる。
「何かいるのか」
リュートはラトナの険しい表情に、先日に砂地で見た化け物は勘弁だぞと眉を寄せた。
「キャノムがいたかも」
シャノフは重々しく応える。彼は遠出はしないものの、本が好きな大人しい性格の若者で、集落で一番の物知りだ。
旅の共にと手を挙げたのは、本で読む世界を垣間見たいという欲求に抗えなかった。勇者を呼び出す話にも身を乗り出し、率先して調査をしていたらしい。
「キャノム?」とティリス。
「とっても恐い奴です」
とにかくシャノフは、役に立つために目的地までのあらゆるものを調べ直し、記憶に叩き込んだ。
「迂回出来ないのか?」
「そうしたいのは山々なんですけど、そうすると三倍くらいかかっちゃうんですよ」
訊ねたリュートにラトナは困ったような声で応えた。
「警戒して進むしかないか」
ベリルは小さく溜息を吐き出し、カルクカンの足を止めることなくハンドガンを確認した。