──昼食はベリルが言っていた通り、ヒャノのムニエルとなった。

 塩胡椒をふり、ヤギの乳から作った粉チーズと乾燥ハーブを混ぜた小麦粉をまぶし、多めの油をひいたフライパンでじっくりと揚げ焼きにする。

 酢に似た液体と生卵に胡椒をひとつまみ。それらをよくかき混ぜてマヨネーズを作りムニエルの隣に添え、彩りにと温野菜や生で食べられる野草を盛り付けて完成となる。

 カルパッチョも考えてはいたが、レキナやリュートたちは生食には抵抗があるらしい。保存がきかない世界ならば仕方がない。

 ラトナは狩人であるせいか、生で食べられる安全な期間とその美味しさを知っており、生食料理がないことを残念に思った。

 天日干しにしている切り身の横には、洗った服が吊されて風にはためいていた。替えの服は、コルコル族の女性たちが出発までの間に繕ってくれたものだ。

 集落の住民が総出で旅支度(たびじたく)を手伝った。彼らにとって、勇者が最後の希望なのだから当たり前ではあるのだけれど。

 勝手に呼び出され、どんな魔獣なのかも解らず倒してくださいと言われた方はたまったものではない。

 気の良い三人であった事はコルコル族にとって、まさに運が良かった。