クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

「糸は持つのか」

「心配いりません。ルルカ蜘蛛の糸を編んだ糸ですから、とても丈夫です。もちろん、竿と針も特別製です」

 そういう問題の大きさだっただろうか。リュートは二の句が継げず様子を見守った。

 全長五メートルはあったかもしれない。あんなもの、そう簡単に釣り上げられるでかさじゃないぞ。

 そうして、魚が飛び上がろうと再び水面から顔を出したそのとき──

“スターン!”

 すかさず投げたベリルのダガーが小気味よい音を立て、見事に魚の額に突き刺さった。それでもしばらくは抵抗していた巨大魚も、とうとう力尽きて水面にぷかりと浮かぶ。

「弱るのを待っていられるか」

「さすがベリル様」

 ラトナは言いもって魚を引き寄せ、シャノフは包丁を手にさっそく(さば)く準備を始めている。