クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

 
 そうこうしているうちに、ベリルの竿先にアタリが──くいくいと糸を引っ張るような動きのあと、力強く竿が曲がる。

 針を食い込ませるためベリルはタイミング良く竿を引いた。

「やった! ベリル様、逃がしちゃだめですよ!」

 レキナも嬉しそうに応援を始める。

 釣りに慣れている訳でもないのに、ベリルの責任は重大だ。同じ傭兵の友人と何度かトローリングに誘われた事はあるものの、陸からの大物は初めての経験である。

 相手が逃げようと引っ張れば糸がたわむ事がないように力を緩め、疲れるとこちらが引くを繰り返していると、水面が矢庭(やにわ)に盛り上がった。

“ドッパアアァァーン!”

「……」

 糸を切ろうと飛び上がった魚に、いくらなんでも予想外だとティリスとリュートは言葉を失う。

「大物でしょ?」

 力も強くて、俺じゃ釣り上げられないんです。

 そんなラトナに、リュートは「そりゃそうだろう」と心の中で応えた。