クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

「あっ」

 ティリスは噛まれた傷が気掛かりでベリルの手を見るも、あれだけの傷が治りかけている事に目を眇める。

「……うそ」

 そんなはずない。あんなに黒く腫れていて、ただれかけていたのに、どうして?

 ふと、見惚れた体を思い起こす。

 見惚れたのは綺麗だからだけじゃない。(あざ)どころか、傷跡すら一つもなかったからなんだ。

「治癒は必要ない」と言ったのは、それに関係があるの?


 ──などと深刻に考えているティリスをよそに、ベリルはこらえていた笑いを絞り出していた。

 理由はもちろん、ティリスとの場面を見たリュートの顔にである。リュートを怒らせるためにやった事ではないのだが、結果的にそうなってしまった。