「いつのまに調教した」

「かしこい動物だ」

 呆れるリュートにカルクカンの首をさすりながら答える。

 リュートはそんなベリルに顔をしかめた。生きている世界はこことはまるで違うと言っていたのに、その馴染みようはなんだ。

 いや、むしろ馴染もうとしている結果なのか。

 この世界は俺たちにはあまり違和感がなく、返ってそれが馴染むことへの壁となっているのかもしれない。

「二日ほど行った所に湖があります」

「わ、ホント?」

 リュートはラトナの言葉に喜ぶティリスを一瞥し、小さく溜息を漏らした。

 神官戦士である彼女は一日に一度、(みそ)ぎ(体を清める事)を行う習わしがある。旅をしているとそれが出来ない場合もあるのだが、可能な限り彼女はそうするようにしていた。

 リュートにとっては面倒でもある一方、男としての葛藤も同時に巻き起こる頭痛の種でもある。