リュートはふと、距離を寄せてくるベリルにいぶかしげな表情を浮かべた。
「ガルムとシャズネスの魔女は本来、この付近にはいないそうだ」
それに目を眇める。
ガルムは岩山に棲んでいるとは聞いたが、シャズネスの魔女もそうなのか。ならばなぜ、二体も間隔を空けずに現れたのか。
「ガルムはティリスの力に、シャズネスの魔女は私を狙った」
それはつまり、あそこにティリスを残したとしても安全では無かったということだ。
「お前が何に狙われていたか。考えるだけでも恐ろしいな」
「出発を早めた本当の理由はそれか」
恐ろしいと言いつつ、楽しんでいるような顔つきに素知らぬふりをする。
「勇者が疫病神になりかねない」
それに一番、心を痛めるのはきっとティリスだ。
「我々はこの世界では異質の存在だ。そこに引き寄せられている可能性がある」
この旅、容易なものではないかもしれない。
ベリルの言葉にリュートの目が険しくなる。
とにかく、なんとしてでもティリスだけは守り抜く。それだけは変わらない。



