クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

 
 ──夜。ベリルは(うまや)でカルクカン一匹、一匹に草を与えて首をさする。

 毎日、ティリスとリュートと共に乗りこなす練習をしていた甲斐があり、今では馬と変わりないほどに乗りこなせるようになった。

 四足歩行の馬とは違い、バランスをとるのにやや苦労はしたが、コツさえ掴めばカルクカン自身もこちらに合わせてくれる。

 かつては空を飛んでいた名残なのか、鶏の手羽先よりも小さな突起が見て取れた。

 集落に飾られているカルクカンの骨を見ればなるほど、鳥類特有の桁構造で非常に軽く強い筋肉を持つ。

 カルクカンの祖先は翼竜だったのかもしれない。

 本来、飛翔しなくなった鳥類には中空の骨はないのだが、私の世界とは進化の仕方が異なるらしい。なんとも興味深い。

 出来るだけ出発を早めるとは言ったものの、拭えない不安に躊躇いはある。それでも、一刻も早くここを発たなければならない理由がある。