──そうして夜も更け、集落の周りは暗闇に包まれる。ベリルは篝火の炎を視界全体で捉えながら、広場の向こうにある暗闇を見つめていた。
夜は静かではない。むしろ騒がしいと言ってもいい。様々な声や木々のざわめきにベリルは耳を傾けていた。
リュートも同じく酒を飲みながら、ベリルの様子を窺う。青年にとって、ベリルは鼻持ちならない輩というだけでなく、気が抜けない相手でもある。
パンケーキをたいらげ、ドーナツを口にしながらティリスはこれからの事を考えていた。
本当にあんな魔獣を倒せるのだろうか。ここで死んだら、あたしはどうなるんだろう。不安が不安を呼び込み、嫌な思考がぐるぐるまわる。
それぞれに明日の事を考えていたそのとき、暗闇からじわりと黒い影がベリルにいくつもの手を伸ばしてきた──
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