クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

「え……」

「体がなまるからと言って」

 もうすぐ出来ますから待っていてくださいねと遠ざかる後ろ姿を、ティリスは呆然と見つめる。

「……初めて来た時も、ベリルは手伝ってたよね」

「そういう性分なんだろ」

「あたしも何か……」

「お前は何もするな」

「どうしてよ」

 続く言葉をぶち切られたティリスは、ムッとしてリュートを見上げる。

「料理が出来るか?」

 うぐっ!?

「で、出来るもん!」

「人間の食えるものを?」

「──っ!」

 ティリスは声を張り上げかけてぐっとこらえた。

「美味しくないだけで……。手伝うだけなら、あたしにだって」

 スネたように口を尖らせる。

「昨日の夕食はあいつが作ったらしい」

「知ってたの?」

「そう言っていたのを聞いただけだ」

 お前はすぐに好奇心を出して迷子になるんだから、俺の近くにいろ。

「ぐっ……」

 そんなことはないと言い切れなくて言葉に詰まる。