クライシス・ゾーン~翡翠の悪魔~

 
 ──集落に戻るときにはすっかり日は暮れ、ラトナたちは捕まえたカルクカンを(うまや)につなぎに行く。

 引かれていくカルクカンをリュートはじっと見つめた。

「あれは大人しい性格で、人にもよく慣れるそうだ」

 噛みつく事も滅多にないらしい。

 言ったベリルを一瞥し、リュートはティリスの元に足を向ける。

「嫌われたか」

 無言で遠ざかる背中を溜息交じりに見送った。

「ね、リュート。あたし、さっきの緑の目のコがいい」

 ティリスはすでに自分の乗るカルクカンを決めているようだった。

 まだ頼みを受けるとは言っていないのにとリュートは苦い顔をする。こうなるとは解っていても、他の方法を模索して然るべきだ。

「ベリルは?」

 先ほどから見当たらない。

「あ、サレファ。ベリルはどこ?」

「夕食作りのお手伝いをしてくれていますよ」

 通りがかりに尋ねられたコルコル族の女性、サレファは快く答える。ほんの一日でコルコル族は三人を受け入れたようだ。